2020/04/06

COVID19を機にますます可視化されてきた社会のひずみ

一部では、ロックダウン中の海外に住む日本人が、母国日本に向かってアレコレ警告や忠告を発しているようだが、私個人的には違和感しか感じない。

確かにイギリスでも、まだコロナが「対岸の火事」でしかなかった3月上旬ごろ、既に武漢に続き壊滅的な打撃を受けていたイタリアやスペインの人たちから、「我々もそうやって呑気に構えていた結果、アッという間にこんな状態になりました。あなたの国で同じ過ちを冒さないように、危機感を持って行動してください」的な警告が発せられた。






それを見て/読んで「うわっウチもヤベーのかな?」とビビった我々イギリス在住者の多くは、それでも半信半疑で警戒はしながらも、当初政府が「Herd Immunity (=集団感染)」を標榜していた事もあり、ロックダウン公布もされず、普通の生活を続けざるを得なかった。3月上旬のことである。

もちろんこの時点で、ミドルクラスのプロフェッショナル達は既にWFHに移行、その他の大半の人々も極力外出を避け、生活必需品の備蓄も進み、いつXデーがきても大丈夫な状態にはなっていた。

しかしこの国の大半を占めるワーキングクラスや低所得層は、3月中旬になっても相変わらず外に出て働かざるを得ないのが実情で、「は?ステイホームできるんならしてるわい!ワイの代わりにパン代稼いでくれるんか、ワレ?」という心の声を押し殺し、黙々と暗い気持ちで満員の地下鉄やバスに乗り、いつもの日常を送っていた。

そして、やはり予想どおりに感染者数・死亡者数がウナギ登りに増え始め、ロックダウンが公布されるも時すでに遅し感に、誰もが打ちひしがれ、なんとも言えない気持ちになったはず。

というイギリス(たぶんアメリカも)の現状を、身をもって体感していながらもなお、前述したような警告をあえて他国に発信する精神構造って、

「思いがけない失敗でお母さんに怒られちゃったお姉ちゃんが、その後同じ失敗をしそうな妹に対してヤイノヤイノ言ってストレス発散してるような感じ」

以外の何物でもないな、と、個人的には感じていた。



だってさ、もうみんな嫌になるほどわかっているじゃん?どの口が、そんなことを言えるのか?ってコト。

ステイホームができる「恵まれた環境」にヌクヌクとあぐらをかく人達が、外に出て働かなければならない人達へ、そんな簡単に助言なんてするものじゃない。

イギリスはすでにソーシャルアパルトヘイトに近い分断が存在していたけど、コロナを機に加速がかかった気がする。

表面上はフロントラインで働くキーワーカーの皆さんアリガトウ!と小綺麗な善意の笑顔を見せるけど、持つ者vs持たざる者の間に流れる溝は深いまま、いや一層大きくなった。

そして安全な場所にいる者たちは、これまでどおり「見ないふりをする事で心の安寧を保とうとする」のかもしれないけれど、多分それも限界。日々増えていく感染者数・死亡者数が単なるデータではなく、自分と共にこの社会で生きる生身の人間だという現実を目の当たりにしたら、良心の呵責どころか自身が心を病みそうないきおいだ。

全国民が団結して共にこのコロナ危機を乗り越えていこう!とどれだけ鼓舞されようと、私たちは皆ほんとうの現実をよく知っている。美しい庭付きの一軒家でWFHの両親とその子供たちがロックダウンを過ごすのと、高層カウンシルフラットで大家族がせめぎ合いながら暮らすのとでは、その意味合いが180度異なる。

でもだからといって、この世はアンフェアだ!と悲観的になったり、攻撃的になったりしても何も変わらない。たぶん、ここからまた改めて色々なアクションが草の根レベルで発生していくんだろうなと思う。






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