ポランスキーといえば、「戦場のピアニスト」や「テス」といった感動作監督といった印象が強いかもしれないけれど、かつては「ローズマリーの赤ちゃん」や「チャイナタウン」といった問題作も撮っておりました。
なかでも、私が個人的にほれ込んだ作品が、1976年作の「テナント・恐怖を借りた男」。今でもベスト20くらいには入る。
もうこれね、最高。ポランスキー自ら主役を演じ、若かりし頃のイザベル・アジャーニも恋人役として登場(とはいえあくまで背景としてで本筋ではない)。
主人公が妄想と憑依に翻弄され、静かにゆるやかに、しかし確実に狂気へと至る後味の悪い娯楽映画。そして何がすごいって、どこかコミカルなのよ。このストーリで、この展開で、なにゆえここまで哀しいくらいにコミカルなのだろうか?ってくらいで。