2018/05/13

Ólafur Arnalds (オラフル・アルナルズ)のロンドン公演@ロイヤル・アルバート・ホール

アイスランドの現代音楽アーティスト、Ólafur Arnalds (オラフル・アルナルズ)のロンドン公演へ行ってきた。

ロイヤルアルバートホール前でパチリ・向こう側にアルバートメモリアル


繊細なピアノの旋律が、空間に余白を生み出しながら、高く遠く広がり、流れる雲のように通り抜け、そこにストリングスの振動が、打ち寄せる波のように、やさしく覆いかぶさっていく・・・、そんな彼の紡ぎ出すインストルメンタル作品は、いわゆるポスト・クラシカルなどというカテゴリーには、到底収まりきらない。



Sigur Rós (シガーロス)やÁsgeir (アウスゲイル)を生み出したアイスランドという国に、抒情的な儚さを投影してしまうのは、私だけだろうか?子供の頃に、空に透かして覗いたビー玉の輝きや、宝物を埋めた土の湿った匂いとか、そんな、いつまでも心のどこかにしまって、大切にしておきたいものたちを、思い起こさせるような何か。



その悟りにも似た曲調から、寡黙で静かな大人っぽい印象を、勝手に描いていたのだけど、舞台の上の彼は、思いのほかワタワタした少年ぽさが、なんとも微笑ましかった。

しっとりとした曲を演奏したかと思えば、その合間のMCが、まるでティーンエイジャーみたいな純朴さ満載で、「う、カワイイ・・・ 萌えっ」と、ひそかに悶えてしまったのが、正直なところ。

「なんか、もう、緊張しちゃって居心地悪くて、ワタワタ、こういう時って、他の人達を居心地悪くしてやろう、って気になるんだよね、ワタワタ、だからココにいる皆さんに、ちょっと歌ってもらいますっ、それ録音してループに使うから、ハハハ」 って、まるで居間で親戚相手にピアノ弾いてるようなノリを、天下のロイヤル・アルバート・ホールでかますという(笑)

静かに染み入るサウンドなのに、意外と観客の反応はブラボー!ヒューヒュー!で、ノリがいいなぁ、元気だなぁ、なんてちょっと驚いた。でも、総立ちになって拍手喝采している観客に向かって、照れくさいのか、「いやいや、いいから、いいから、早く座って~」と、着席を促すあたり、良いなぁ、慢心がないなぁ、とオバサン感心。

会場内・開演前だからガラガラだけど、この後満員御礼に


今夜の公演には、アイスランドから一家が総出で応援に駆けつけてきたらしく、うれしそうに感謝の意を伝えると共に、最後のアンコール曲を家族に捧げて演奏。この曲はおばあちゃんが亡くなったときに作ったんだそう(涙)暗い場内に、ほのかに灯る小さなライト、その下で消え入りそうな繊細なピアノの旋律が、大きなロイヤル・アルバート・ホールに響き渡る。シンとした、凛とした空間に、多くの私たちが国境を越えて、心の奥にしまっておいた大切な何かを共有しているような感覚。会場のアチコチで、ズズッと鼻をすする音が聞こえ、よかった涙腺崩壊しているのは私だけじゃない、とホッとしながらボロボロ泣いてしまったよ。

最後の曲が終わっても、余韻が続き、静寂がしばし残っていた、あの瞬間。かなりの感動。来て良かった。

昼間はずいぶん暖かくなったこの頃だけど、夜半はちょっと冷え込んで。公演が終わった帰り道で、ブルブルと身体を震わせながらも、心の真ん中はジワンと暖かいまま、優しい気分で終えた1日。



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