2017/12/18

ダブリンで日本人として働くということ・英語学校のマーケティング




いわゆる英語学校は教育機関なのか、ビジネスなのか、はたまたコミュニティなのか、ダンバーシティという文化なのか?

という疑問が私の中にはずっとあったのだが、多分その回答となるのは、「全ての要素を包容しながらも、何に重きを置くかによって、その学校の本質が見えてくる」なんだろうな、と思うようになった。それはきっと、ダブリンのとある語学学校でマーケティングリサーチとセールスプロモーション企画のお手伝いをする機会に恵まれたからかもしれない。



ところでダブリンには数多くの英語学校があるが、日本人生徒の割合はアメリカ留学やイギリス留学と比較すると非常に少ないため、穴場的な語学留学先として日本でも近年注目を集めている。

と同時に、現地ダブリンの語学学校側としても、日本人学生のシェア率が急激に伸びてきたことを受け、さらなる拡張を視野に入れた戦略を打ち出し始めるようになってきた。

ダブリンの留学生コミュニティで大きな勢力を持つのは、まずブラジル、そして韓国。そこへ新たに真面目で金払いの良い日本人留学生が増えて来ている・・・ときたら、どの学校も「ぜひわが校へ!」と触手を伸ばしたくなるのが人の常。

ただし、冒頭の私の疑問に対し「我々はれっきとした教育機関である」と銘打つような由緒正しい英語学校(大学付属など)であれば、既に日本での知名度や大手企業との提携が築かれているため、ダブリンにおける日本人留学生の絶対数が増加すれば自然と自校の日本人生徒数も増えていくし、そこで逆に日本人受け入れの上限などを設けることで更にプレミアム感を打ち出すことすらできる殿様状態ゆえ、事情は異なる。

一方ダブリン中心部の雑居ビルなどにある英語学校の多くは、教育機関というよりはビジネス主体のエンティティとして、一人でも多くの生徒を獲得すべく精力的にプロモーション活動を行い、校舎や教師陣の質よりも、便利な立地と安い授業料を謳い、ダブリンでの仕事や生活が目的の外国人のための受け皿として機能している。

こういったビジネス主体の語学学校は、それまで有効であったブラジルや韓国の留学生を対象としたマーケティング戦略が、どうやら日本人には功をなさない、ということに疑問を持ち始める。"我々は、こんなにお得な授業料を打ち出しているのに、なぜ日本人は高い学校へ行きたがるのだ?" と。

普通に考えれば「アナタの提供している商材が、ターゲットとする消費者のニーズに合っていない」という、ただそれだけの事なのだが。

もっとわかりやすく言い換えると、日本から来る語学留学生の大半は、「ステキな学校で情熱的な先生と楽しい仲間たちに囲まれてキラキラの留学生活を送るプライスレスな経験」 自体が目的であって、他国からの留学生の様にダブリンで生きていくために英語が必要!とか、ダブリンで仕事を得るために学生ビザが必要!というワケではないのだ。

しかし、こういった想像力に欠ける英語学校は、日本人マーケット担当者を雇い、日本人の特性や日本の留学マーケットの知識を活かしたPR&セールス活動や、母国語で日本人生徒の問合せや相談をさせることで、未知の、しかしポテンシャルの高い上顧客となりそうな日本人の生徒を獲得しようと目論むのだが、前述したように根本的にボタンを掛け違えている状況からは、そうそう上手くいくはずもない。

さらに、安い授業料を謳うような薄利多売ビジネス主体の英語学校が、「○○○人マーケット担当者」へ標準的な固定給が支払えるはずもなく、その多くがコミッション制(歩合制)であるがゆえに、生徒獲得に至るまではスズメの涙程度の収入に甘んじなければならない。

そして、現状を把握すれば非常にタフでハードなポジションにも関わらず、こういった英語学校の「日本人マーケット担当」という仕事に、一種の憧れをもって応募する現地の日本人の方々がとても多いという現実が、いかにダブリンでの(特にワーホリでの)仕事探しが困難か、を象徴しているような気もする。

ともあれ、このような状況の英語学校で、臨時で2ヵ月ほど日本人マーケット担当として関わってみて、もし自分に1年間という種まきの猶予があったら、「お金も学歴も職歴も乏しいけれど、世界を視野に入れた活動をしたい!」という意欲に満ちた若者支援計画として、こういった安い英語学校を利用してやれー!的なパンク活動をするけどなー、なんて妄想を膨らませていたのだが、その前にビザが下りて正社員の仕事が始まってしまったので断念。

あれから約1年ほど経つけど、当時日本人がゼロだったあの学校に、何人かの日本人の生徒さんは通うようになったのだろうか?





 もちろんダブリンにある英語学校の全てがこのような状況であるわけではないが、決して少数派でもなさそうだということだけは追記しておく。

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